Yurindie

創作百合作品の紹介をしています。

コミティアで百合同人誌を出してみました(その1 動機について)

去る8月19日(日)に開催されたコミティア125に、SUBURBAN HOMEというサークル名で参加し、無料配布の百合同人誌を出してきました。自分が同人誌即売会にサークル参加するのも、なんらかの創作物を世に出すのも、この歳にして初めての経験だったのですがわりと楽しかったので、それについて数回に分けてしたためていきたいと思います。

なんのためにそんなものを書くかと言うと、これは、「みんなも軽いノリで創作活動やってみようぜ(同人誌作ってみようぜ)」という、そういうあれです。

初回の本エントリーでは、まずコミティアにサークル参加しようと思い至るまでの動機のところから触れていこうかなと思います。

こう言ってはなんですが、創作活動をするのに動機なんか必要あるか?という人は、人に言われなくてもとっくに創作活動をしてるんじゃないかと思います。ですがこの文章をどんな人に向けて届けたいかということを考えた場合、動機というのは大事な要素かなと思ったので、最初のエントリーはまるまるそこに割くことにしました。「軽いノリで創作活動やってみようぜ」とは言ったものの、「軽いノリ」に至るまでにも動機が必要だよね、という話です。

 ここでは、あくまで自分を例にしてその動機についてしたためていくのですが、これに限らず、今回のコミティア参加についてのエントリーは全て「私(さいとう)がこうした」という形で記述していくので、その点ご留意のうえ、おつきあいしていただければと思います。

ということで、自分が今回コミティアに参加して同人誌を出してみた動機なのですが、これについてはいくつか複合的な要素があり、それを段階順に説明していきます。

 

 動機1 日々の労働と田舎暮らしにうんざりしていた
それに抗うために、去年からは三ヶ月に一度東京へ行ってコミティアに一般参加したり、街で買い物をしたりしていたのですが、それだけでは物足りないことに気づき始めました。

動機2 川崎昌平さんの「労働者のための同人誌入門」に触発された

三ヶ月に一度コミティアに一般参加しようと、「ただの消費者」「外野」であることに変わりはない。そんな虚しさを感じつつあった頃、ちょうどコミティア123のサークルカタログでこの本(同人誌)の存在を知り、読んだみたところまさに自分のために書かれたような本で、とても影響を受けたのでした。
「つらい生活と、つまらない自分……その双方を変化させうるものは、断じて『消費』ではない。『表現』である。(vol.1 序文より)」
自分の頭の中でなんとなく思っていたことでも、ティアマガの表紙を飾るほどの先達にこう断言されると「やはりそうか!」と気付かされるわけで、動機1のところで感じていた日々の物足りなさを埋めるためには、創作しかないのだと、そういう結論に至る大きな動機となった本でした。

動機3 このブログをやりだして、他の方の作る同人誌に触発された
これはかなり大きい要素かなと思います。SNSでバズっているものだけではなく、多様性のあるいろいろな百合作品に触れて、うわあ何やってもいいんじゃん、自分もやってみてえ、という気になったというか。
あと、私は百合作品だと昔は女性作家のものばかり読んでたのですが、男性作家でも面白い作品を描く方がたくさんいることを知り、男が描く百合はフェイクじゃないんだ、と勇気づけられたのも大きいかなと思います。

動機4 加齢により、どうでもよくなった
若い頃から創作活動をやりたいという気持ちはあったし、コミティアにもかなり昔から一般参加をしていて、サークル参加も面白そうだなーとはずっと思っていたのですが、いろいろと頭でっかちな言い訳をつけて踏ん切りがつかなかったまま結構な歳になってしまいました。しかし歳を重ねたことにより、挫折をするのも恥をかくのも慣れてしまったのか、そういった言い訳のひとつひとつがどうでもよくなり、軽いノリでやってみよう、という気になったのも大きい気がします。
とはいえ本当は、若い感性があるうちに創作活動をやっておいたほうが良いにきまっているので、皆さんには何歳であろうと軽いノリで創作活動をやってほしいものです。

とまあ、自分の動機について触れてみましたが、動機なんてなんでもいいと思います。でも何かしらの動機がないと、人前に自分(の腕前と頭の中)を晒す恥ずかしさという障壁を超えられないのも事実だと思います。子供の頃から創作者を夢見てずっと実行に移してきた人だけが創作をしていいということは決してなく、誰もが創作活動をしていいし、そのための場所はこの国にたくさん用意されていて、自分の場合はコミティアを選んだというだけのことです。

とうことで、次回はコミティアへの参加申し込み~執筆までの流れについて書こうと思います。

 

※おまけ1 「川崎昌平『労働者のための同人誌入門』について」

川崎昌平さんの「労働者のための同人誌入門」(全4巻)は、何のとりえもなく日々の労働に消耗していた主人公が、ゼロの状態から同人誌を作りはじめることにより、日常に何かしらの変化がもたらされるという作品です。変化といっても、売れっ子の同人作家になるとかプロになるとか、そういったことではなく、ジョブ(労働)とワーク(同人誌づくり)を両立させることにより、生活(人生)の質を少しだけ上げていこう、という本だと思います。
「なぜ同人誌を作るのか」という動機の点については、自分のこのエントリーよりもよっぽど参考になる本なので、ぜひ入手して読んでいただきたいと思います。
通販や電子書籍の取扱いは以下のとおり。全巻揃っているところがないので、次のコミティアにて川崎昌平さんのスペース(polocco)で直接買うのが一番早いかもしれません。

COMIC ZIN(vol.2・3のみ ※9/8現在)
シカク(vol.1・3・4のみ ※9/8現在)
Amazon kindle(vol.1のみ)(kindle unlimitedもあり)

ちなみに、同じく川崎昌平さんによる商業単行本で「労働者のための漫画の描き方教室」(春秋社)という本も最近出版されていて、私は最初「同人誌入門」の改訂版のような内容なのかなと思って買ってみたんですが、中身はそれと全く異なり、かなり難解な奇書でした。これはこれで大変面白いのですが、「軽いノリで創作活動をやる」向きの本ではなく、「同人誌入門」のほうがずっとその向きのある本となっているので、最初は「同人誌入門」を読むことをお勧めします。


※おまけ2「なぜコミティアなのか」

単に、自分が定期的に足を運んでいる同人誌即売会がそれだけだったので、馴染み深かったというだけです。
別に創作活動をするなら二次創作でもいいし、TwitterやPixivなどのSNSでもいいと思います。というか、今日びほとんどの同人作家さんはそこからスタートしていると思いますし。

ただ、SNS同人誌即売会の大きな違いは「タイムリミット(締切)」があるという点で、発表するタイミングについて完全な自由が与えられているSNSだと、完璧な出来栄えにこだわって(という言い訳をつけて)いつまでたっても創作を完成させられない場合があるのに対し、同人誌即売会は当日までに本を作らないと参加費をドブに捨てることになるという一定のプレッシャーがあり、それが創作に着手し完成させるための大きな動機付けになることは間違いないと思います。

ついでに、私はコミティア以外の同人誌即売会をそんなに知らないので他との比較はわからないですが、なんとなくコミティアは「フラットに評価される場」という印象がありました(個人的な偏見だけど、SNSはそうではないという印象)。SNSでたくさんのフォロワーを抱えていなくても、宣伝が上手でなくても、立派な見栄えのする本でなくても、見る人は見てくれているというか。見本誌コーナーもあるし。
実際参加してみて、自分がブースに座っている時間は多分10分もなかったのですが、その短い間でもチープな表紙のコピー本を手にとって見てくれる方がちらほらいたのに驚きました。